米文学概論は12週目が終了した。授業も最終盤に入った。前回は20世紀初頭の米文学を特徴づけるポスト・リアリズム的な文学、すなわちモダニズム文学の特徴とそれが起こった背景について考察した。それを承けて、今回は米国のモダニズム詩人を数名取り上げて、モダニズムの特徴が比較的見えやすい詩作品を学生と一緒に読んだ。
学生にも話したけれども、是非とも一読をお薦めしたいのは、視覚に訴える詩作品で米文学史に名を残したe. e. カミングスである。一度見たら忘れられない印象を残すこと間違いなしである。その魅力を残念ながら文字で表現することは不可能である。というのも、ただ単に「見て楽しむ」ことにカミングスの詩は存在意義があるからである。まさに、旧来的な価値観、モノの見方を打ち壊すモダニズムの真骨頂を伝える詩人と言っても良い。
その美的センスは単なる文字の集合体であることを越える。意味の、あるいは無意味の矢が次々と読み手の胸に突き刺さる。彼が両次大戦とともに生きた事実を勘案するならば、彼の詩作品は戦争がもたらす破壊とそれに続く再生のプロセスをなぞっていると言える。それだけでなく、戦争によって歪み切った現代(モダン)社会のカタチを、文字の持つ意味を越えて視覚に訴える形で彼は表現しようと試みたのではないだろうか。この点について、21世紀の日本を席巻するヴァーチャルな世界観とそれに紐づく世界線と関係づけて学生と考察を行った。
次回は秋学期の授業で取り上げた作家・作品のまとめと総括を行う予定にしている。学生のこれまでの成果物から学生の米文学に対する関心度の向上が認められることを切に願う。合わせて、掴みづらいという評価が概して付きまとう「米文学というマテリアル」に対する学生の心的・物的ハードルが少しでもこの授業を通して下がれば、教員としては望外の喜びである。
