米文学概論は4週目が終了した。前回は、19世紀前半の米文学を特徴づける「ロマン主義」の特徴、それが起こった背景について、21世紀の日本における個性を重視した「歌い手」や自己表現の様々な形として見ることが可能なYouTuberやVTuberに寄せられる関心と社会的影響力の強さを学生と一緒に概観した。
それを承けて、4週目の授業ではロマン主義の中でも独自路線を走ったとされる「個性派」の作家たちを取り上げた。具体的にはエドガー・アラン・ポーとエミリー・ディキンソンである。前者は推理小説の元祖とも呼ばれ、その影響力は日本の推理作家の第一人者である江戸川乱歩のペンネームの由来としても知られている。後者は女流詩人であるが、その硬質なイメージと切れ味の鋭い比喩を駆使した詩を通して愛と死を歌う詩作品によって名を残している。両者に共通して、同調圧力に屈しない「独自色」を挙げることができる。この点については、学生に対してどのように考えるかを問うことで、米文学をより身近な問題系と絡めて眺める機会を学生に提供した。
ポーは最良の美的効果を生み出すように計算して作品を書き上げたと言われる。その想像(創造)力の発揮には学生ともども今年度も大いに「美(び)っくり」した次第である。未読の諸氏は、是非ともポーの作品(タイパに適した短編が多い!)に訳本で構わないのでチャレンジして欲しい。