アメリカ歴史・文化講義(Introduction to American History and Culture)

アメリカ歴史・文化講義は9週目が終了した。前後の時代と区別する際の利便性のため、人は「○○時代」というラベルをやたらと貼る傾向にある。さしずめ、今の日本は「ポストコロナの時代」只中ということで意見の一致を見るだろう。さて、今回は第一大戦後の米国の空前の繁栄期「ジャズ・エイジ(ジャズの時代)」を取り上げて学生と一緒にこの繁栄の時代の表と裏について、解説を適宜入れながら考察を深めた。  

戦後の好景気に支えられて、米国人は繁栄を謳歌する。しかし、それは長続きしない。1929年にはニューヨーク市で起こった銀行の倒産を起爆スイッチとして世界を巻き込む大不況(世界恐慌)が起こる。短期間であるが故に、人々の記憶と記録に残った稀有な時代と呼んで構わないかもしれない。20世紀の終盤の日本が目撃したバブルとその崩壊を特集した記事を読み、それとジャズ・エイジが絶妙にシンクロしていることを学生と一緒に確認した。なお、日本の場合はジャズではなくて、ディスコを彩ったアップテンポでデジタル加工されたダンスミュージックだったことにも言及した。 日本のバブル期にはユニークな女性のファッションが目立ったが、ジャズ・エイジの女性たちもそれに負けてはいない。短髪、ミニスカート、真っ赤な口紅。彼女たちは夜な夜なダンスパーティに出かけ、男性と交わる。「新しい女性」の姿を米国社会に見せつける。  

関連して、1920年に米国では憲法修正を受けて女性に選挙権が付与される。長く抑圧されてきた女性が遅ればせながら解放される。ただし、これらの明るい側面の裏で、禁酒法の施行による締め付け、共産主義に対する過剰な警戒と排除、が時代を保守色に染め上げる。ジャズ・エイジを顧みれば、躁と鬱が同居する実に奇妙な時代であったと言える。