米文学概論は8週目が終了した。前回はリアリズム(写実主義)の特徴とその背景について説明しつつ、その概観を示した。今週は米国のリアリズム文学を代表する三巨頭、すなわちマーク・トウェイン、ウィリアム・ディーン・ハウエルズ、ヘンリー・ジェイムズの三者の作品の特徴・当時と今の評価の違い、各人が作品を通してこだわった表現技法などについて「作品の断片を通して見えてくる各人の特徴に焦点を当て」て学生と一緒に考察した。
ハウエルズに関して言うならば、文壇の大御所としてトウェインやジェイムズを遥かに凌ぐ人気と影響力を有していた。しかし、「当時の読者にマッチ」したハウエルズ的な道徳観を代弁する彼の作品の今日的な評価はすこぶる低い。このような凋落について、学生目線で今日の日本の一過性の流行事例と絡めながら、作品の評価が時代を越えて一定では必ずしもないこと、それを決めるのは誰、又は何かについて「価値観」に潜む政治性・文化性という観点から議論をした。
授業内では、合わせて、トウェインの短編を取り上げて、学生にトウェインらしさについて考察を行わせた。短編の中に盛り込まれた米国全体に広がるイメージの連鎖反応に直に触れてもらい、ディズニーランドのアトラクションではないことを実体験してもらった。